2008-07-03

医師不足の原因は何?

以下、毎日新聞より(2008年7月2日)

質問なるほドリ:医師不足の原因は何?=回答・清水健二

<NEWS NAVIGATOR>

 ◆医師不足の原因は何?

 ◇過酷な労働で勤務医が減少--政府、抑制から増員へ転換
 なるほドリ 「医療崩壊」って聞くけど、お医者さんがそんなに減っているの?

 記者 実は、医師の数自体は年間3000~4000人程度増えています。現役を引退する医師の数より、新しく医師免許を取る人の方が多いからです。それでも医師不足が深刻だと言われるのは、産婦人科や外科など激務と言われる診療科の勤務医が減っているせいです。06年の産婦人科の勤務医数は、04年と比べて5・6%減、同じく外科の勤務医数は7・2%減です。

 Q 勤務医が減ると、どんなことが起きるの?

 A 地域の中核病院で産婦人科や小児科の休診や閉鎖が相次ぎました。特に仕事のきつい産科の医師不足によって、「里帰り出産」を断られたり、妊婦の急患の搬送先を見つけられずに「たらい回し」されたりする事態が起きています。小児科や外科でも、夜間の救急に対応しきれない病院が増えています。

 Q 産科などの勤務医が減っているのはどうして?

 A 大きな要因は、病院勤務の過酷さです。宿直明けでそのまま日中の勤務に就くことがあるため、訴訟のリスクも高まります。この結果、医師の開業医志向が高まり、勤務医が敬遠されるようになったのです。また、04年度から新卒医師の臨床研修が義務化されたため、大学病院が地方の病院に医師を派遣できなくなったことも一因です。

 Q 国は何か対策を打っていないの?

 A 政府の基本方針は最近まで医師の養成数を抑制することでした。具体的には医学部の定員削減です。82年と97年には定員削減の閣議決定までしています。ところが、医師不足に対する国民の不安が高まったため、厚生労働省は「安心と希望の医療確保ビジョン」として、医学部の定員増へと方針を転換しました。この政策転換は「骨太の方針08」にも盛り込まれました。

 Q 医学部の定員を増やしたら問題は解決するの?

 A 医学部生が一人前になるのは入学から10年後と言われるので、すぐに効果が出るわけではありません。それまでに地域や診療科によって医師が偏る状態を改善し、開業医との連携を強めて勤務医の負担を軽くすることが必要です。(社会部)

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 〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係(naruhodori@mbx.mainichi.co.jp)

毎日新聞 2008年7月2日 東京朝刊

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